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登録日:2010年4月22日

淘汰された同業他社のシェア獲得

「不況は贅肉を取るための注射である」-松下幸之助(パナソニック創業者)

不況時は不良資本が整理され、同業他社の淘汰が進みます。新規事業も減少するので、「二番煎じ」の競合相手が出てくる可能性も低くなります。まさに、シェア獲得の狙い目なのです。

帝国データバンクが発表した2009年の倒産件数 【表1】は、前年比4.9%増の1万3306件と3年連続で増加しています。景気低迷やデフレに伴う販売不振が原因の「不況型」倒産は同8.4%増の1万0833件となり、構成比が81.4%と初めて80%を超えました。 業種別では、減産の影響を受けた製造業 【表2】が同21.9%増の2084件と大幅に増加しており、マンション販売が不振の不動産業も同13.8%増の488件でした。 倒産件数が急増している製造業での2009年の倒産企業の規模は、中小零細企業の倒産が依然として多いものの、上場企業のエス・イー・エス(半導体洗浄装置製造業)など「負債額100億円以上」の企業が14件(前年6件)、「従業員数300人以上」の企業が9件(前年3件)と比較的事業規模の大きな倒産も増えています。 皮肉にも、事業規模の大きな倒産の発生は新規企業にそのぶん大きなシェアをもたらす可能性を生み出します。

「不況は贅肉を取るための注射である」-松下幸之助(パナソニック創業者)
倒産件数【表1】 倒産件数【表1】

※ 構成比(不況型倒産件数/倒産件数)
※ 2005年5月報(2005年6月発刊)より、「全国企業倒産集計」の集計対象が変更されました。そのため、2005年と2006年との単純比較はできません。

※ 出典:帝国データバンク「全国企業倒産集計」
製造業の倒産動向 【表2】製造業の倒産動向 【表2】※ 出典:帝国データバンク「全国企業倒産集計」

一方、野村総合研究所が昨年末に発表した「生活者1万人アンケート調査」 【表3】によると、「一流企業に勤めるよりも、自分で事業をおこしたいか」との質問に対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた割合は計35%。前回発表した2006年の40%から5ポイント低下しています。 同様に、財団法人日本生産性本部が昨年発表した「第20回2009年度新入社員意識調査」 【表4】(回答数2348人)によると、「社内で出世するより、自分で起業して独立したい」と回答した人の割合が過去最低の14.1%となり、6年連続で減少しています。 このように、競合相手が減少することは、新規企業によるシェア獲得の可能性を高めると考えられます。

一流企業に勤めるよりも、自分で事業をおこしたい【表3】 ※ 出典:野村総合研究所「生活者1万人アンケート調査」
社内で出世するより、自分で起業して独立したい【表4】 ※ 出典:財団法人日本生産性本部「第20回2009年度新入社員意識調査」

不況にも関わらず2009年純利益が前年比54%増の65億2000万ドル(約5900億円)という好決算を記録した、グーグル社のチーフ・テクノロジー・アドボケートのマイケル・ジョーンズ氏は、雑誌の取材の中で、「この不況の中で生き残っている企業は、競合他社が消えていくことで、市場シェアを伸ばしている。ある企業がなくなれば、その企業の顧客はどこか別の企業に同様の商品を求めることになる。こうした顧客を積極的に取り込んで行けば、成長のための大きなチャンスになる」と不況下でのシェア獲得の仕組みを説明しています。 「贅肉」が取れた不況時こそ、ニーズに適した事業を選択した上で新規企業が参入し、「筋肉」として定着・増強していくチャンスだといえそうです。

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