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登録日:2010年4月22日

企業や消費者のコスト見直しが進み、大型受注も可能に

不況下ではコスト削減を図るために、企業は従来の取引先を自動継続的に使うのではなく、契約を見直す傾向があります。同様に、一般消費者も買い控えだけでなく、今まで購入していた商品を買い換えていくという行動を起こすようになります。 このようなコストの見直しは、工夫やアイデア次第で、新規企業の商品が従来品からシェアを奪いやすい環境を作ります。


取引先の見直しへ

大丸松坂屋百貨店を傘下に置くJ.フロント リテイリングは2009年、百貨店の販売不振から脱却するために、従来の取引先の見直しに入りました。 その第1弾として、新しく中堅アパレルメーカーの「クロスプラス」(名古屋市)と組んで、通常の国内アパレル製品の半額以下となる婦人服を開発・販売し、業界での生き残りを図ろうとしています。 クロスプラスは中堅アパレルメーカーで、イオンやイトーヨーカ堂に自社ブランドの製品を供給しています。百貨店より販売量が多い量販店向けに大量生産する提携工場を活用し、縫製などの品質を維持した上で原価を大幅に抑えているのが特徴です。 J.フロント リテイリングは、クロスプラス以外のアパレルメーカーとも低価格ブランドの開発にむけて交渉中で、今後は紳士服の分野での新たな展開も検討しているそうです。

取引先の見直しへ

受注に成功する企業

1万人以上の雇用調整を見込む自動車製造業に属していても、技術力を武器に企業のコスト見直しに食い込み、利益を上げている中小企業があります。長野県中小企業団体中央会が発行する月刊中小企業レポートによると、自動車のステアリング(操舵装置)は油圧から電動に移行しており、その新技術に着目した電動パワーステアリング関連の中小企業はフル稼働の状態だとか。 ある中小企業の経営者は「こういう不況のときのほうが、メーカーは少しでも利益を出すために、普段は変えない取引先を見直すので、提案能力があればどんどん仕事はとれる」と受注の秘訣を話しているそうです。 取引先の見直しによってピンチに陥る企業もあれば、業績を伸ばす企業もあります。同レポートは「不況により多くの経営者が萎縮して新規の行動を控えるときは、現場情報をつかみ自社の優位性を高めていく投資行動をするチャンスです。その情報はけっして本やインターネットにあるのではなく、営業現場や製造現場にあり、その動きをタイムリーに正確につかんでいる経営者が利益をだしていると言えると思います」と分析しています。 企業だけでなく、一般消費者の購買動向にも変化が起きてきています。不況下では消費者は財布のひもを締めますが、単純に低価格志向に走っているというわけではありません。 インターネットリサーチ事業などを展開する「アイシェア」が昨年発表した消費者意識調査(回答数581人)【表1】 によると、「不況になったことで以前と比較して製品購入の際に意識するようになったことはあるか?」との質問に対し、「品質と価格のバランスを重視するようになった」が40.8%と最も多く、「価格を重視するようになった」の19.8%を20ポイント以上上回りました。

不況になったことで以前と比較して製品購入の際に最も意識していること【表1】

単位:%不況になったことで以前と比較して製品購入の際に最も意識していること【表1】
※ 出典:アイシェア「消費者意識調査」
この調査結果を裏付ける結果といえそうなのが、プライベートブランド(PB)商品の人気ぶりです。 PB商品は小売業者が企画・開発し、メーカーに生産を委託した自主企画商品です。小売業者がすべて買い取って売り切る仕組みなので、メーカー品より1~5割程度安い上に、品質が保持されているのが魅力です。 2009年3月時点で、PB市場は2年以内に少なくとも年2兆円となり、食品・日用品全体の5%以上に達する見込みです。 PB商品で先行しているイオンは、2008年2月期に約2600億円だったPB売上高を2011年2月期に7500億円にする予定です。これは2008年2月期の小売事業(約4兆1000億円)の18%程度に相当します。 さらに、日本政策金融公庫が今年2月に発表した「消費者動向調査」【 表2 】 によると、 「暮らし向きが良くなった場合のPB食品の購入意向」に関する質問に対し、「購入を増やす・始める」と回答した人が「購入を減らす・やめる」と回答した人を上回っており、景気が好転してもPB食品離れが起きないと分析しています。 低価格志向が強まる中、PB商品のように価格と品質のバランスがとれている商品が、消費の新たな担い手として期待されているようです。

安藤百福氏からのエール

暮らし向きが良くなった場合のPB商品の購入意向【表2】

単位:% 暮らし向きが良くなった場合のPB商品の購入意向【表2】 ※ 出典:日本政策金融公庫「消費者動向調査」

不況時は、これまでの市場の均衡が破られます。市場の動向を分析し、アイデアと工夫を凝らし、限られた資源を効果的に集中できた企業が、成長することができる絶好のチャンスととらえることができそうです。

「日清食品」の創業者で、即席めん「チキンラーメン」を開発した安藤百福氏は生前、情報誌の取材の中で、

「人のやっていないことに挑戦することが大事。素人の発想でいいから、まず実際にやってみる。目先にとらわれずに、いつも時代の先を読んで、未知の分野を開拓する。逆に素人だから飛躍できるチャンスがある。なまじ知識がある人は、常識からはみ出した発想はできません」

と起業家を目指す若者にエールを送っています。
安藤百福氏からのエール
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